2011年10月1日土曜日

退職しました

皆様大変お久しぶりです。日本に帰国後、色々と忙しくしていた隠者でございます。
まぁ、ツイートをごらんになった皆様はご存知のように、昨日、常駐先での業務を完了し、同時に退職となりました。

当時、十数人の創業10年目の技術者集団に、2年以上にもわたり勧誘を受け、ぜひ一緒に仕事をしたいという言葉に誘われて、入社を決意したのが2002年末。当時は、「会社なんかいつ無くなっても仕方ない」といい続けてきた技術集団を、きちんとした会社にしなければと感じた最年長の経営にいた技術者が、「ビジョンがある」という営業出身者に代表権が移ってから10年。

結局、会社への変革はできず、技術者の稼ぎから行った投資が実らず、いつの間にか当時の技術者が一人、また一人と去り、かつての技術者が育ててきた親会社の信用を生贄に子会社に従業員全員強制転籍なんて荒業まで行われました。そんな会社で、去り行く人たちを寂しく見送りながら、友のため、お客様のためにと、無駄にあがいてきましたが、ようやく一区切りをつけ自分自身を送り出す事ができました。

そんな流れに身をおきながら、とある経営者の人となんとなく語りあった内容を少し思い出しながら書いてみようかと思います。大して面白い話でもないので、適当に読み捨ててください。





さて、会社というものには、どんな会社であっても、始まりと、いずれ終わりがあります。そんな会社もただ漠然と始まり、自然と終わるというものではなく、いくつかの節目というようなものがあるように思います。

1. 仲間とのスタートアップ
たいていの場合、会社が始まるときというのは、誰かの決意に、賛同した仲間が集ってはじまるように思います。少なくとも隠者が属していた会社はそうだったと聞いています。
もちろん、最初から莫大な資金を得て一気に大きな会社を動かすというケースもあるのかもしれませんが、隠者の身近にはありませんでした。

多くの場合が、二人から三人、多くでも五人くらいの漠然と意思を確認し合える仲間内ではじまるものと理解しています。

スタートアップの当初に、それなりの稼ぎさえあれば、順調に走り出せますが、仕事が続くか否かは重要な分かれ道です。お金も信用も無いなかでもがいて、最初の一年目というのは、ある意味仕事が続きお金が入るか否か、そんな勝負の一年目なのではないでしょうか。


2. 意思の継続
さて、最初のがむしゃらな一年が過ぎれば、翌年は余裕を持った一年を過ごし、2年目は無難にすごせるような気がします。ただ、人間、最初の目的意識の変化は3年もあれば生じてきます。仲間どうしの諍いは、多くの場合3年目に危機を招くでしょう。ここをどう乗り切るか。それは、お互い腹を割り、譲歩しあって切り抜けるしかないと思います。
と、えらそうに書きますが、友人の居た会社をみてそう思うだけで、実感として何かがあるわけでもありません。あしからず。


3. 仲間から集団へ
さて、3年目を乗り切った仲間の集まりには、お高い採用試験も、採用のルールも、そもそも人を雇うというプロセスもあまり明確になっていないケースが多いのではないでしょうか。

しかし、曲がりなりにも社としての形をなして3年を過ぎ、お客様とのつながりができてくると、どうしても人手が必要となってきます。ここで有能な人材を集めていけるかどうかも、会社として継続できるかの分かれ道かもしれません。なぜなら少数だけの会社は一人かけると大きく力を失ってしまうからです。人を増やさなくてはいけないフェーズですが、見知らぬ人をひきつけるような会社に3年でたどり着けるのは、本の一握りの幸運な会社だけかと思います。

この段階では、仲間の誰かが、自分の身近で信用の置ける人に声をかけ登用しはじめます。最初の数人までは、仲間に紹介しあい、仲間の中に入っていきますが、次第に大きくなり始めると、全員とのパスを築かずにある特定のノードにぶら下がりっぱなしで、仲間内に展開しきれなくなります。

普通、この仲間から集団へのプロセスが進み、齟齬が出始めるのは5年目くらいでしょうか。自分の知らない誰かが、自分たちの関係に割り込んでくると嫌な印象を持ってしまう人は少なくないはずです。

しかも、技術者の能力値というのは、なかなか客観的に図るのが難しいものです。一緒に仕事でもしていればともかく、仲間の言う事であっても、新しく入った人間のスキルを信用できない人もでてきます。そんな新人を育てるために、自分たちの会社の運営費が使われ始めたりすると、快く思えなかったり、そこに時間を割くことが本当に重要なのか、疑問の声もあがりはじめるでしょう。
とはいえ、反目しあい、けん制しあっていたとしても、仕事とお金さえ回っていればなんとか収まっていけるかと思います。遊んでいる新人ではなくて、手の足りない部分を生めるための新人なら、多少の軋轢はあっても、大きな文句もでないでしょう。


4. 集団から組織へ
5年目を過ぎ、人の数が両手で収まらない状況になると、いい加減な組織体制では不整合が大きくなっていきます。仲間が好き勝手に集めた集団で、お互いに好き嫌いや、反目があっては、同じ方向に走る事ができなくなります。
ここで問題になるのがどう組織立てするかでしょう。
もともと、仲間が知り合いに声をかけ、各自好き放題にピラミッドを形成すると、それを再編するのは難しくなります。彼は自分が誘ったのに、彼女は自分の部下だという意思が強すぎれば、再編は困難を極めるでしょう。
会社生誕から7年目くらいの歳に、おそらく組織を整理統合しようとする動きが、トップダウンで起こるはずです。やり方を間違えれば、一気に分解しかねない危険な作業で、分解を恐れて放置すれば、取り返しの付かない病巣に変貌する可能性もあります。
おそらく、もっとも神経を使うのが、この組織作りというものではないでしょうか。


5. 組織から会社へ
だいたい、会社が生まれて、本当に会社らしい会社といえるようになるのは、10年目という節目くらいなのではないでしょうか。

組織と、会社の違いは何かといえば、おそらく組織としての機能性でしょう。
形式的な組織図が、機能的な実用品に変わる瞬間とでもいいましょうか。

もともと仲間内で、そこそこ向いている人が請け負っていた作業が、正式に任命された作業になる。もともとの仲間といえど、上下関係が明確になる、組織(命令)体系、給与体系、雇用体系、すべてに一定のルール付けが行われ、個としての仕事ではなく集団としての仕事になる。

いわゆる、安定した会社というのは、そういうもので、この頃になると、最初の仲間内から欠ける人も少なからず出てくるかと思います。良かれ悪しかれ組織を支えているといった満足感や、好きな流れを作り出せるような面白みは薄れますから。ただし、そうして不満を抱えて一人二人が欠けても、安易に崩れる事の無い健全性が、いわゆる会社というものです。

人間10年も生きると、普通の人は、社会的な地位、家族に大きな変化が現れます。まぁ、技術者の場合は、10年たっても一人きりの可能性が大きいのは僕自身がそうなので良くわかっていますけれども。

けれど、スタートアップの頃のような自由気ままはゆるされず、賃金の額も身分に応じた格差が生まれます。スタートアップの仲間だけが同じ仕事でも大金を掴み、後から入った新人は安月給では格差が大きすぎますが、とはいえ一方的に仲間の収入を減らせば、貴重な人材を失います。これは、非常に難しい問題なのです。

10年目に求められるのは、組織の体質を健全に保ち、スタートアップのメンバーのコンセンサスを取り、各自に適切な役割を与え、組織としての機能性を保つということではないでしょうか。
組織の一員として、それぞれのポジションを確認していく事になります。

もしも組織化が適切に行われていない状況で、この急激につまらなくなった10年目を迎えると、訪れるのは悲劇だけです。多くのソフトウェア会社が10年を超えるのが難しいのは、わりと新興の業種だからというのはもちろん、実はこの4や5が非常に難しい業界だからなのかもしれません。

プログラマの能力というのは、できる人とできない人の能力の開きがトンでもなく大きい場合があります。生産性が軽く5倍から10倍は違うのです。営業畑の人に話してもまったく信じてもらえないときがありますが、これが真実です。

それだけの生産性の違いがあり、できる人が早く仕事が終わる分、より多くの仕事が回ってくるとしたら、それでも同じ給料ではやっていけなくなります。ですから、適切に能力を見分け、適切な地位に就け、適切な待遇の違いを作らなくてはなりませんので、その作業たるや想像するだけで難しい問題です。

おまけに生産性の高いプログラマというのは、猜疑心が強く、独立心が高く、物事を斜めに見る傾向があり、興味があるものにはひた走り、興味がないものは驚くほどあっさり切り捨てます。
非常に困った事にたいていの場合、頭がよく、頑固で、そして多くの場合変態です。

能力の高さ低さは、外見や、日常会話からは判断が付きません。中には真面目に勉強し、真面目に仕事をしている姿を見られると照れる技術者も居ます。ほっとくとアニメの話しかしていないエンジニアが、とんでもなく高い能力を秘めている場合もあるのです。(まぁ、アニメ好きでも、僕のような残念なプログラマもいますけど。)

こんな難しいプログラマという人種を組織化し、会社の中に組み入れるというのは、非常に難儀な綱渡りになるでしょう。おまけに、困った事にプログラマは、能力が高いと思ったプログラマに群がり信仰する場合があります。つまり、能力の高い人材は統制が取れないにもかかわらず、組織から切り落とせば、大きな傷になる可能性があるのです。

如何にバランスをとり、どう解決していくべきなのか・・・・。おそらく経営者にはもっとも困難で、厳しい問題です。え・・・どうすればいいか?そんなこと、平のプログラマーにわかれば苦労はありません。




6. 失敗
さて、この先には、会社の分社化、企業グループ化と続くのですが、まぁ、そういう流れの中に身をおいた事がないので、いい加減空想物語はここら辺にとどめておきましょうか。

隠者自身は経営者ではありません。「責難は成事にあらず」自分が成り代わり成せる事でもないのに責めるだけなのには意味はありませんが、なぜ失敗したのか、少し考えてみたいのです。

隠者の所属した会社は、数人の技術者がお客様から仕事を請けるのに口座が必要だったから、仕方なくはじまったようです。いつ無くなってもしょうがないけど、会社には最低限の運営費を入れて、それぞれが稼いだ分をそれぞれに分配しようねという発想から集まっていた集団だったのです。

ちょうど時代はITバブル絶頂期を駆け抜けてきた会社。古いメンバーから時折話しに出るのは、稼いではキャバクラでお金を使いまくったというリッチなご時勢の話。はっきり言うけど、社会に出た瞬間に就職氷河期だったこっちからすれば、そんなにお金があるなら、JTAG ICEが買えるのに!とうらやましくなっちゃいますね。

そんなうらやましい時代を駆け抜けた会社の経営者は、10年を経ようとした時には不景気が訪れており、実は会社も何度かの危機をなんとか切り抜けたところでした。しかし、自分よりも若い連中は、歳を食ったものの、相変わらず会社はいつつぶれてもいいというけれど、家庭を持って子供が居るものも居れば、お金をまったく蓄えてないものもいる。不景気は続き、先が見通せないなか、会社をつぶすわけには行かないという思いでした。

ちょうど10年に向かう節目というのは、組織化を考えなければならない時期なのですが、不幸な事に、経済状況から、経営者が考えたのは「将来のビジョンが必要」という事だったのです。
大きなビジョンを語る、仲間内の外にいた経営経験もある営業出身者に目をつけてしまったのは、責められないことなのかもしれません。

そうして選ばれた経営者にも不幸だったのは、集団からは部外者と思われていた事です。仲間でもない人が、共通認識であったものをかってにひっくりかえし、会社として体裁を整えようといきなり枠をはめたのです。それも、個々の能力やつながり、経緯を考えずに、組織化をすっとばして。
それでも、せめて経営者としての才能があればよかったものの、前職で経営に失敗し、立場を追われてきたような方。不景気の最中ということもあって、仕事もうまく回せずに、社内に敵だけを作る結果となりました(まぁ、自業自得の部分が強すぎて擁護する気にもなれないのはここだけの秘密)。


7. 教訓
技術者ってのは変態ばっかり・・・(こら。

集団を組織に変え、会社へと変貌させるというのは、ただ枠にはめて済む話ではありません。
人が集まりで何かを成すとき、それぞれには、立場に応じた責務を負うことになります。
でも、自身の責務をはっきりと自覚するためには、そもそもどんな立場にあるのかを明確にしなくてはなりません。

冷静な分析と判断、人を知り、人のつながりを知り、人を信じることで、初めて適切な役割を与えていけるのではないでしょうか。

会社のトップに立つと、自分は偉いと錯覚する事もあるかもしれませんが、よほど指導力に優れ、多くのアイディアを持つ経営者を除き、たいていの場合単にほかの人より少し重い責任を負っている、ただそれだけの場合が多いのです。

上から目線で、自分の考えをお前らが悟れ、俺様についてこいというのではなく、どのように説明すれば理解してもらえるのか、もしも逆の立場だったなら、自身の行動が相手にどう見えるのか、それをよく考え、自分なら望む最高の対応をできているなら、それだけでも、違う未来があったかもしれません。

技術は人につくもので、組織につくものではありません。
技術組織において、何よりも大切なのは技術をもった人という資産なのです。共に仕事をして、経験も能力も把握できている技術者は、ほかの何にも変えがたいものなのです。

まぁ、理解されてないと感じながらも、最後まで伝えるだけは伝えましたから、願わくば、あの会社も残った技術者たちをなんとか大切にしていって欲しいものなのですが・・・。

3 件のコメント:

  1. I am a Hermit. プログラマーの宿命なのかもしれない。一つを追いかけ、一つの捨てる。積み木細工のように、またそこに新しい技術という積み木を積んでいく。57歳あと3年、最後まで積み木を積み上げて生きたい。だから、Hermitなのかも。

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  2. Androidやったし、Linuxやったし、LabViewやったし、後は、CGIやってみるべ!

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